令和5年4月27日から始まる相続土地国庫帰属制度。土地を相続したものの利用する予定がない方や管理ができず困っている方にとっては注目したい制度です。この制度についてはいくつかの要件を満たす必要がありますので、以下では詳しくご紹介します。
ご紹介するのは、愛知県春日井市の行政書士中川です。当事務所では相続手続きや遺言書作成をお手伝いしています。 ※この記事は2023年2月現在の情報に基づいています
相続土地国庫帰属制度とは?
相続や遺贈を理由として土地を取得した方が、一定の要件を満たし10年分の土地管理費用相当額の負担金を納付すれば、土地を手放し国庫に帰属させることができる制度です。以前と比較して土地利用ニーズが低下していることから、土地を譲り受けても負担にしかならないというケースが増加しています。そのため、管理が行き届かず放置され荒廃してしまう状況を本制度により回避できることが期待されています。
この制度の要件を満たした場合は、負担金を納付した時点で国庫に帰属することになります。
対象となる土地は、施行前に相続した土地も対象となります。また、共有地でも制度利用は可能ですが、申請は共有者全員で行う必要があります。
申請できる方
相続または相続人に対する遺贈によって土地を取得した人が申請可能です。
売買で取得した方は、相続・遺贈によって取得したとはいえないため、この制度を利用することはできません。
認められるための要件
土地に関する要件と負担金支払いの要件があります。
土地の要件
土地の要件として、却下事由及び不承認事由に当たらない土地である必要があります。
以下でご紹介するケースは通常の管理や処分をするために過分な費用や労力が必要な土地であるとして要件を満たさないと判断されます。
申請自体できない却下事由となるケース
・建物がある土地
・担保権や使用収益権が設定されている土地
・他人の利用が予定されている土地
・土壌が汚染されている土地
・境界が明らかでない土地や所有権の存否・範囲について争いがある土地
国庫帰属の承認が得られない不承認事由となるケース
・一定の勾配・高さのある崖があり、管理に過分な費用・労力が必要な土地
・土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
・土地の管理・処分のために除去しなければいけない有体物が地下にある土地
・隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
・その他、通常の管理・処分にあたって過分な費用・労力がかかる土地
上記のケースにあたるかどうか文言だけでは判断が難しいこともあるため、詳細を定めた政令が令和4年9月29日に出されています。
例えば、隣接所有者等によって通行が現に妨害されている場合には、「隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地」とされ、適切な造林・間伐・保育が実施されておらず、国による整備が追加的に必要な森林については、「通常の管理・処分にあたって過分な費用・労力がかかる土地」と判断されます。
負担金等
申請時に必要な審査手数料及び対象の土地に応じ算出された10年分の土地管理費相当の負担金を支払う必要があります。
負担金の算出に関しては、法務省令で定められています。こちらは法務省ホームページで示された負担金算定の具体例です。
対象となる土地によって算出方法が異なりますので、具体的な負担金の金額については、こちらの法務省ホームページ「負担金の算定式」も合わせてご確認ください。
法務省:相続土地国庫帰属制度の負担金 (moj.go.jp)
申請先
帰属させる土地を管轄する法務局・地方法務局になる予定です。
手続きの流れが確認できますのでご覧ください。(法務省ホームページ)
まとめ
この制度を利用する前提として、まずは相続手続きを完了させ、申請者が相続によって土地を取得した状態である必要があります。また、現在要件を満たさない土地の場合は、建物があれば取り壊しをする、土地の上または地中に何らかのものがある場合はその除去をするなどの準備が必要です。境界がはっきりしていない場合は、その点の手続もあらかじめ行う必要があります。
このように、時間や費用もそれなりにかかります。また、要件が厳しく、必ず承認されるといった簡単なものではありません。
ただ、これまで望まない土地を含めた財産を相続するか放棄するかを選択せざるを得なかったところ、相続しつつ一部土地を国庫に帰属させるという選択肢が広がった点はとても大きいと思います。土地の問題をご自身の代で解決することができる機会ができたともいえるでしょう。
土地を相続すると、その管理や固定資産税などの負担が大きく相続人にのしかかります。利用予定のない相続した宅地や農地については、この制度利用を検討してみるのも一つの方法です。
本制度では申請代理が認められていません。申請自体はご本人に行っていただく必要がありますが、行政書士は申請に必要な申請書や添付書類作成のお手伝いができる専門家として認められています。当事務所でもお任せいただけますので、よろしければお問い合わせください。
法務省:相続土地国庫帰属制度における専門家の活用等について (moj.go.jp)
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